月曜日
月曜日のkは忙しい。大量の『kちゃんお願い☆メモ』をこなすだけで半日がつぶれる。
漸う一日の仕事を終わらせ、さあ、帰るかと事務所へ向かう通路で話しかけられる。
「fghjm,.dfguiop?」
外国語だ。外国語?
kの背中に冷や汗が流れた。日本語すら不自由なのに、どうすりゃいいんだ。店内で唯一英語の達者なsさんの姿を探す。
しまった、sさん休みだ!
誰かに助けを求めようと周囲を見回す。同じ時間に上がる同僚の姿が見える。
「おつかれさまー(笑顔)」
くそう、目を見て言いやがれ、なんで足早なんだよ。
己の中のシンジが目を覚ます。にげちゃだめだにげちゃだめだにげちゃだめだ
なおもお客様は話しかけてくる。「asxcghidcvbn?」
ちょっと待て、よく聞いたら英語じゃないぞ。単語の組み合わせで何とかなると思ったのに!
「xcghjiopghnm,Spanishxfghiop」
あ、なんか聞こえたぞ。ええと、すぱにっしゅ・・・スペイン語かい!!
スペインなんて、
闘牛・オムレツ・ペネロペ・クルス
位しか知らない我に何を問うと言わっしゃるか。逃げたい、激しく逃げたい。しかし頼れる人は誰もいないのだ。
捨て身のボディ・ランゲージと『日西辞書』を駆使して、何を求めているか判明。
『スペイン語→日本語の辞書で、日本語はローマ字表記』
お国で買って来やがれ!!
そんなものは少なくともこの店には無い。しかもそういう辞書、国内の出版社で出してるのか?既に出版社はやっていないので明日各辞書の版元と、もしかしたら洋販あたりに聞いてみないとならないかも知れない。どちらにしろ注文だ。
注文・・・オーダー・・・なんて言うんだスペイン語で!
「えーと、注文ね、ちゅうもん。オーダー。この店にはね、無いの。置いてないのね、でね・・・」
強引に日本語で説明を続け、なんとか意図が伝わる。やった・・・!よく頑張った我・・・!!ビバ我!!
結局注文にはならず(なったらsさんに丸投げするつもりではあった)「Gracias」と言葉を残し、お客様は帰って行かれた。
ふと時計を見ると、既に1時間が経過。そこに上司が。
「あれ、kさんまだいたの?」
はい・・・いました・・・・ぐったり