シルヴィ・ギエムの「愛の物語」Aプロ  4月29日 東京文化会館

真夏の夜の夢』  東京バレエ団初演

キャスト
タイターニア  斎藤友佳理
オベロン  木村和夫
パック  古川和則
ボトム  平野玲
ハーミア  小出領子
ライサンダー  後藤晴雄
ヘレナ  井脇幸江
デミトリアス  高岸直樹
村人  野辺誠治 氷室友 長瀬直義 横内国弘 松下裕次
エンドウの花の精  高村順子
蛾の精  門西雅美
蜘蛛の精  長谷川智佳子
カラシナの精  西村真由美



初演初日です。大変堅実なキャスティング。結論から言うと、とても面白かった。観ている間、ずっとニコニコしてました。楽しくて。


ご存知かと思いますが、内容は、妖精の王と女王が仲違い。王はお付の妖精、パックに命じて女王タイターニアに意趣返しをしようとするものの、行き違いとパックのイタズラと巻き込まれた二組の恋人や村人たちがこんがらがって大変な事態に。最終的には全てが納まるところに納まります。後はシェイクスピア読んでください。角川文庫で出ています。


初日オベロンの木村さんは2日目デミトリアス、初日デミトリアスの高岸さんが3日目オベロン、初日ライサンダーの後藤兄が2日目のオベロンになるのですね。トリプルキャスト。全部観たかったなあ。オベロンのキャスト(性格)によって雰囲気変わる作品でしょう、これ。木村さんはとても端整で誠実な踊りを踊る方でこの日のオベロンも、パックの所業に翻弄された末に漸く仲直りできたタイターニアをおおらかに包み込むような、大人の男として演じていました。2日目の後藤兄だったらもっとワイルドでセクシーに、3日目の高岸さんならちょっとイタズラっぽく、ユーモラスになっていたんではないでしょうか。余裕綽々な感じで。
タイターニアの斎藤さんはもう「人間外」をやらせたら右に出る人はいないという妖精ダンサー。それ以外踊れない、というのではなく、本人が妖精っぽいのですよ。儚くて。意地っ張りで可愛いタイターニア。2日目の吉岡美佳(大好き!)と3日目の上野水香だとやっぱりまるっきり違うんだろうなあ。吉岡さんだともう少しクールっぽくなるかも。

パックの古川さんとボトムの平野さんは最近どんどん大きな役で出てきてますね。平野さん、バレエ団のポスターにも起用されてなかったかな?違ったかな。若手が成長しているのを見るのはとても楽しい。ボトム良かったなあ。パックにロバにされてあわてている様の踊りが素晴らしかった。カーテンコールにもボトムそのままで応えてくれてて、もう可愛いったら!パックのせいで大混乱に陥る二組の恋人たちには看板ダンサー揃い踏み。小出さんも成長著しいですね。すごい勢いであがってきた。余裕があってご本人たちも愉しんで踊ってらっしゃったのではないでしょうか。「あの人をこっちへこの人をあっちへその人はそっちじゃなくてこっちだけどおまえはいらない」という恋人組み換えのときなんて、客席から笑いがおきてた。

意外とレパートリーの少ない東京バレエ団の、新たなレパートリーに加わる事を祈る。是非また観たい。


ただワタクシ、初めて「真夏の夜の夢」を知ったのが「ガラスの仮面」なので、後にちゃんとシェイクスピア読んだにもかかわらず、オベロンがどうしても「『劇団一角獣』の団長」で浮かんできてしまうので、困る。


・・・後藤弟が退団していたのに気づかなかった・・・ショックだ・・・




『マルグリットとアルマン』

キャスト
マルグリット  シルヴィ・ギエム
アルマン  ニコラ・ル・リッシュ
アルマンの父  アンソニー・ダウエル
公爵  ルーク・ヘイドン
マルグリットの取り巻き  オリヴィエ・シャヌ マシュー・エンディコット アンドレア・ヴォルピンテスタ ギャビン・フィッツパトリック マシュー・グラハム 平野玲 ダンカン・ヒューム トーマス・サプスフォード
メイド  シモーナ・キエザ


「椿姫」です。前に同じ演目を観た事があるのですが、そのときより良かった。ニコラ・ル・リッシュ、足長いなあ。やっぱりアルマンは体格の良いダンサーの方が合うなあ。

死の床にある高級娼婦マルグリットの回想シーンから始まります。恋人アルマンとの出会い、見せかけの裏切り、別れ、そして死に瀕した時戻って来たアルマンとの最後の逢瀬。


ギエムの凄さは視線、そして指先の一つで感情を表現してしまうことでしょう。身体の動きの美しさはもう前提として。
どんなに愛していても、どんなに高級でもマルグリットは娼婦。籠の中から出ることは出来ないのだろうか。アルマンの父親は二人の仲を裂こうとする。父親にも葛藤があります。それに凛として対峙するマルグリット。ギエムの視線の強さ。アルマンに再会したときの、湧き上がり、そして搾り出すような情熱、愛情。なんて切ない。なんて美しい。
父のアンソニー・ダウエルもさすがの貫禄。渋くてかっこいいなあ。ニコラ・ル・リッシュはなんか、何度観ても「肉食の王子」って感じ。フェロモン全開の強さでちょっと思い込み激しい役柄にとても合っているように思う。
今パンフ見たら同じ年だったよ、私・・・。フランス人年わかんないな。


どう表現していいか、伝える言葉を私は持っていないのですが、とにかくギエムは「圧倒的」なんです。全てが違う。私のような素人目にもわかります。私がここで書かずともちょっと検索すれば、ギエムの凄さを書いてらっしゃる方々が大勢いらっしゃると思います。でも一度、実際に観ていただきたい。絶対「もっと観たい!」と思うハズです。


45分の演目なのですが、もっと、ずっと、ずっと、観ていたかった。
次の来日は「最後のボレロ」になるのだろうか。その前に7月の「マノン」があるか。


私に無限のお金があれば、Bプロ(三人姉妹/カルメン/田園の出来事)も観たいところです。Cプロ(三人姉妹/カルメン/マルグリットとアルマン)はAとBを観れば押さえられる・・・けどやっぱり全部観たい・・・

この日は生オケが入ってました。幸せだった。完璧な一日でございました。