文庫目録を見る7 掲載順編

ひたすら目録について書き続けて来ましたが、今日でおしまい。


今までは、「確定している事」を取り上げて来ました。内容紹介や、解説者、ライトノベルにおける職業。これは目録の編集者や、作品の作者が熟慮した上で、決定稿として世に送り出したものです。人の思考の産物。


さて、目録で唯一、人の思惑から外れた項目があります。それが、掲載の順番。
その文庫に収められた順番によって、否応なしに若い番号から割り振られていく。ジャンルなどお構いなしです。*1だから純文学の隣に男性向けロマンスが並んでいたり、そうかと思えば同系統の作家が並んでいたりする。CHARAの隣がいきなり壺井栄だったりするわけです。大槻ケンヂ尾崎豊が並んでいるのも、えもいわれぬ味わいがありますね(以上角川)。「銀色夏生→菊池秀行」(新潮文庫)も結構な破壊力です。

ジャンル無視の作者の並びっぷりを更に楽しむには、作家の顔を思い浮かべ、「この二人が並んで会話が成り立つか」を想像するという手もあります。
顔写真は、そうですね、新潮だったら折り返しの部分に著者近影が載っていますし、著名な作家であれば、ちょっと検索すれば出てくる場合があります。トーハン・日販のサイトでインタビュー画像が載っているときもありますので探してみてください。
このパターンで私のお気に入りは、何日か前に書きましたが、小学館文庫の「嶽本野ばら田原総一朗」です。会話成り立たないでしょう。柘植久慶辻仁成」(集英社)というのはどうか。柘植が一方的に激高し、辻が内心怯えながら表面上はにこやかに崇高な事を言おうとしているが空回っている情景が目に浮かびます。大変失礼な情景ですね。ごめんなさい。
東海林さだお椎名誠(文春文庫)は、だれか画策したんじゃないかと思うほど「セット」感が漂います。対談集も出しておられるしね。探せばもっと強烈な並びがあると思います。予測不可能なモノって、不意をつかれるから面白い。









余談ですが、私の手元にある一冊の本。これが小さな謎を抱えています。角川文庫・ドン・ウィンズロウ「ボビー・Zの気怠く優雅な人生」。これですね、私の買った文庫は『ウ-13-1』です。しかし目録を見ると『ウ-13-1』は、サムエル・ウルマン「青春とは、心の若さである。」になってます。「ボビーZ」は『ウ-16-1』。誤植があったのかと思い、ブックサーチで確認してみたら、私の持っている方の通し番号で合ってる。初版だけ間違ったのかと思ったのですが、ちょっと前の角川の文庫一覧表では、『ウ-16-1』は番号自体が存在せず、次の「歓喜の島」の『ウ-16-2』から始まってるんですね。「ボビー」は『13』のまま。そのときはウルマンは載ってなかった。支離滅裂もいいところです。おそらく、1時期ウルマンが品切れかなんかで、在庫から消えていたんでしょう。で、「あ、13空いてるじゃん」とそこにウィンズロウ入れちゃったと。で、ウルマンの人気が再燃して重版かけた際に不備に気づいた。その後誰も気づかないだろうとこっそり修正。って所でしょう。
絶対違うと思いますが。

まったく支障も無いので、別に良いんですが。謎は謎のまま残しておくのも良いもんですしね。












いらっしゃるかどうか判りませんが、全部読んで下さった方、お疲れ様でした。有難うございました。まさか一週間も同じネタで引っ張るとは思いもしなかった事でしょう。一つとして実生活でお役に立てることなど書いてませんが、こんな感じで目録を楽しんでいるわけです。すごい適当な締め方になってますが。
目録は情報の宝庫です。いろんなくだらない楽しみ方が出来ますので、本体共々愛でてやっていただけると、大変嬉しいです。




この日記は1ページに7日間表示されるように設定してあります。野望が満たされて、私は今、達成感でいっぱいです。一度1ページ全部同じタイトルで埋め尽くしてみたかったんだよ!うわあ、ちいせえ野望。







明日・明後日は日記お休みです。

*1:実用文庫はこの限りではありません。ジャンルによって色分けされてる場合もある。たとえば光文社の知恵の森文庫だったら「お-1-1」が色違いで2冊あったりする。