文庫化話 その2

以前「文庫化するのが早い出版社」の事を書いた気がしますが、それにしても早い。
今日ちょっと某出版社のこれから数ヶ月の文庫出版情報を見てしまったのですが、かなり驚いた。アレ、もう文庫化するのかよ!もったいない!!公表していいのかどうか判らないので一応避けますが、2点ほど驚いたものがあります(他にも「早えよ!」というのはあったんですが)。なんつうかねえ。1点はとても装丁が素晴らしく、ちょっとした仕掛けもされていて、内容を読んだ後その仕掛けに気づくとハッとする、という趣向が凝らされているのです(これで何の本かわかるかも)。文芸書ならではの素敵な遊びですよね。本の内容と装丁が見事に合っている。文庫であの手触りとあの仕掛けを再現するにはコストがかかりすぎるだろうから普通の装丁になるんだろうけど。文庫好きとしては文庫化は嬉しいが、装丁好きとしては不満だ。もうちょっと四六判で売っててもバチは当たらないと思うよ。あの装丁、もっと色んな人に楽しんでもらいたいなあ。
もう一点は、まあ最近この著者の本が某媒体で取り上げられていて、その本は出て間もないし、売れるうちに高いまましばらく売って、そのかわりその前に出た本を文庫化して便乗して売っちゃえ、という戦略が見えるのですが。勘ぐりでしたらすみません某出版社の方。

文芸書の装丁はデザイナーの方の遊び心が見えて楽しいですね。カバーが折りたたまれていて、広げるとポスターになるとか(某歌手の本)。乙一の「失はれる物語」(角川書店)の表紙カバーは水がにじんで本体に印刷された楽譜が浮き出ているような不思議な印刷。これ印刷所の方苦労されたろうなあ。とてもきれい。ノベルスだと最近は表紙はあっても本体「全て」袋とじとかあって、立ち読みもできやしないものもあります。たしか高里椎奈の「ドルチェ・ヴィスタ」(講談社ノベルス)シリーズとかそうだった気が(他にもあったハズだけどとっさに思い出せない。老いたな私)。これも面白い仕掛けですよね。かえって読みたくなる。ミステリだから許される事ですが。ちなみに私は恩田陸の「MAZE」(双葉社)の装丁が好きです。舞城王太郎の「熊の場所」(講談社)も好きだ。なんかふかふかしてるの。表紙が。触らずにいられない。

  
文芸書でどんなに工夫を凝らした装丁にしても、文庫になると全部一緒くたの紙質になってしまうのって、ちょっと寂しい。「安く手元に」というのは大変にありがたいのですが(本当にありがたい。量買うし)、本の楽しみって、その本特有の手触りやデザイン、重みを感じるという事も含まれると思うのですよ。だからって装丁に凝るあまり、文芸書と大して変わらない金額になるのも本末転倒なんですけどね。


ただ各出版社の文庫の個性もあって面白いんですが。まあ、その話は気が向いたらいつか。