谷山浩子コンサート『猫森集会 2007』 <トモトモと初めてのオールリクエスト>  ゲスト:山口とも(Per.)  於:新宿スペースゼロ


長いので折りたたみます。興味のある方のみどうぞ。






初めて谷山浩子のコンサートに行きました。通常のコンサートツアーとは別の、ちょっとマニアックな企画です。ディープなファン向けでしょうか。

谷山浩子はとても好きなのですが、ただ、私の場合周期があって、大体5年くらいの間隔でブームがやってきます。だからCDを全部持っているわけでもないし、知らない曲もたくさんある。で、たぶんこういう一般向けではないコンサートって、「オレこそが真のヒロコファンだ!」という方たちがたくさん来ているだろうから、圧倒されないだろうかと不安ではあったのです。実際ファンの方たちものっすごい強烈ではあったのですが。
ロビーで客層観察していると(年齢層高かった・・・)目の前をネコ耳つけた女の人が横切って行って、ちょっと驚愕。さらに後ろの方で「ああ!ウチにもネコ耳あったのにー!してくれば良かったー!」という嘆きが聞こえ、振り返ったらどう見ても私と同年代。自宅ににネコ耳がある、と云う事実と、して来なくてもいいんじゃね?、と戸惑いと、「三十路半ばでネコ耳・・・」と動揺に何処からツッコミを入れていいのか悩んだり、かと思えば毎回来ている常連さんたちの「あ、ども。今日○○さんは〜?」という夏と冬に海っぺりで良く聞くよその会話ああ、客層かぶってるんだなと改めて感じてみたり。昨年参加の友人は「去年はゲドの影響か普通のカップルもいて意外に感じたんだけど、今年は去年私が予想した客層でなんか嬉しい」という、ヒロコさんに対してものすごく失礼な感想を述べていました。謝れ。ヒロコさんに謝れ。そしてここにいる時点で私たちも同類だ。ただこの会場で既に一杯やってきたのは私たちだけだったと思います。




AプロからDプロまであり、それぞれ

Aプロ  <由貴ちゃんとにんじんポテト>ゲスト斉藤由貴
Bプロ  <ヒトシくんと怪しい音楽会>ゲスト渡辺等
Cプロ  <トモトモと初めてのオールリクエスト>ゲスト山口とも
Dプロ  <小室さんもおさかなも雨の中>ゲスト小室等

という大変濃いメンツが揃っています。


当初「やっぱさあ、80年代に青春を送ったモノとしては斉藤由貴を聴きたいよね」と言っていたのですが、チケット瞬殺。さすがです。30代アイドルオタクの一種のアイコンですからねえ。仕方ない。で、第二候補として、昨年友人が参加して、ものっ凄く面白かった、と言っていたオールリクエストを取ったのですが、結果的に大正解。



オールリクエストですので、セットリストは決まっていません。「客席にいる皆さんが構成をする」訳です。入場の時に切り離したチケットの半券をステージ上で引いて、当たった方が好きな曲をリクエスト。友人に連れられて来た。とかあんまり曲を知らない。とか、ちょっとこわい。と云う人でも大丈夫なように、パスしたい人は右隣の人に譲る事ができます。一番最初の曲と一番最後の曲は、谷山さんご本人のセレクト。その他がリクエストです。去年だか今年、さだまさしが同じようにオールリクエストのコンサートをやったそうで、あらかじめ300曲を指定しておいてその中から選んでもらったにもかかわらず疲労困憊の末「もう2度とやらない」とおっしゃてたそうですが、谷山さん1000曲以上ありますからね。指定もしてないし。「勝ったね」と言ってましたけど、ホントにね。よく覚えてるよね。


ステージにいるのは谷山さんとプロデューサー石井AQさん。シンセサイザー担当。そして山口ともさん。パーカッション。前にUAがNHKでやってた子ども番組「ドレミノテレビ」にも出てましたね。青い髪の人(以前新宿ルミネですれ違った事ありますが、平常時にもあの色でした)。今回は黒髪でしたが。肩パットがっつり入った細身のスーツにあの特徴のある髪型。ステージ上のともさんブースには鍋やら流木やらナゾのブツの数々。何から何までステキすぎです。


まずは一曲め。11月に発売されるアルバムから。


1  『まもるくん』


この曲「まもるくんは駅によくいる 壁から半分出ている 膝のところに顔がある 行きかう人は見てみぬふり」とかそういう歌なんですが見てみぬふりするだろうそんな人いたら。怖すぎる。この人「メルヘンとファンタジーをオブラート代わりにした情念の人」だからなあ。


ここのともさんかなり挙動不審。このままだったらもうともさん気になって曲楽しめないよ!!どうしよう!!とかすかに不安に。曲には見事に合ってたのですが。この曲だけみんなで練習したんだそうです。


ここで信じられない事実。ともさん谷山浩子の曲を10曲前後しか知らない。
正しくは『数年前に参加したときにやった曲と前日リクエストされた曲のみ』。でもこの人基本的にアドリブの人ですからね。なんとかしちゃうんだろうなとは思ってたんですが、いかんせん、「どんな雰囲気の曲か」だけは知らないと大変です。で、谷山さんが一曲ごとに説明します。


2  『DOOR』 (ここの説明忘れた)

3  『電波塔の少年』 

「電波塔に男の子がいるんです」「好きな女の子の事を思い続けているんです」「で、電波になっちゃうんです」「・・・電波・・に?」「はい」「・・・わかりました」「わかっちゃうんですか?これだけで?」  




4  『夢のスープ』 

「訳がわかんない歌です」「階段をどんどん下っていくんです」「で、ぐちゃぐちゃって」「一番下には・・あれなにもないんだっけ?」「ぐちゃぐちゃ・・・わかりました」「いいんですか?」



5  『ひとみの永遠』 

「これはCMになった曲です」「雨がふって・・あれ?(歌詞を確認)あ!雨降ってない!!青空って書いてある!!すみません、「青空」です」「青空で・・・さわやか・・・わかりました」




ここでチケットからのリクエストは終了。チェック問題形式になります。『エコっぽい人チェック』
「お買い物の時にはエコバック持参」「屋根に風車がついている」「お風呂は2・3日に一回だ」「ハイブリッドカー、または自転車」等の10個の質問で、一番チェック項目の多かった一人にリクエスト権。9項目の女性に当たりました。そうか・・・お風呂2・3日に一回か・・・無理だ私・・・勝てっこないじゃん。
「リクエストはなんですか?」「『やまわろ』で」「やまわろ?!・・予想外のものが来てしまいました・・・どうしよう私できるかな・・・これピアノ失敗したらおわりだよね?」「ともさん。これはあのー。妖怪の歌です。」「妖怪・・・」「結構速い曲で・・・最後はパっと。こういう感じで終わります」「こういう感じ・・ですね。わかりました」




6  『やまわろ』


案の定コード間違ってるよ谷山さん。自分で笑っちゃてたけど。そして何もかも「わかりました」と諾々と受けるトモトモ。素晴らしい。





次はじゃんけん大会。2人に絞られました。
まず女性。
「あ、昨日「10年通ってるのに一度も当たらない人もいる」という話をしている時にうなづいてた方ですよね?」「1回につき10人くらいですから、当たらなくて当然なんです。むしろ当たるのがおかしいんです」「もう2度と無いと思ってください」場内爆笑。
「リクエストは?」
何とか言う漫画(聞き取れませんでした)のイメージアルバムに入っていて、『谷山浩子』のアルバムには入ってない曲なんだそうです。そういうのいっぱいありそうですね。



7  『MOON GATE』




もう一人、男性。
「お仕事は?」「商社勤めです」「あ、商社マン」「いえシステム担当なんで」「え?商社勤めの方を商社マンというんじゃないんですか?あ、コンンピュータ担当の方はそう言わないんですか・・・目から鱗が落ちました」
「リクエストは?」

「ともさん、これは『種』なんです。2億年前から待ってるんです」
「待ってるんですか」
「逢いたい人がいて、ずっとずっと待ってるんです。種のまま待ってるんです」
「じゃあ・・・逢っていても待ってるんでしょうね・・・」
「え・・?」
「待ち続けているんでしょうね」
「逢っていても、待っている・・・すごい・・そうですね、そうなんでしょうね・・あ、今歌が出来そうです」

歌が出来る決定的瞬間。




8  『恋人の種』


これ素晴らしかった。ちょっと震えた。元の曲も良いんだけど、効果音(というのか?)が入ることによって深く広くなる。このアレンジもう一回聴きたいけど、アドリブだからなあ。奇跡的な瞬間だった。





最後にまたじゃんけん大会。最後に残ったのは男性でした。
「じゃんけん、元からお強いんですか?」「いえ、普通です。今は順番に出していただけで」「え?じゃあ私も順番に出していたってこと?うわあ・・・気をつけよう・・」爆笑。
「リクエストは」「メジャーな曲で申し訳ないんですけど」
メジャーで悪い事なんかな無いのに、こういう所だとマニアックな曲言いたくなるよね。


「これはですね、朝日と夕陽をてんぷらにして食べちゃうんです」「はい?」「てんぷらです」「太陽を・・食べちゃう」「いえ、太陽を食べちゃったら光が増えないじゃないですか。一個しかないから」「で。ポップな感じで」「わかりました」わかっちゃうともさんすげえ。




9  『てんぷら☆さんらいず』


これがね。スパっと終わる曲なんですが、それをともさんに伝え忘れて。一瞬谷山さんが「あ、マズイ」という顔をしたんですが、ともさんとっさにシンバル押さえて。すごい反射神経でした。普通の曲ならともかく、『てんぷら』はわりと速い曲なんで、谷山さんもAQさんもともさんに合図送れなかったんですね。AQさんも「アイコンタクト出来ればともさん間に合ったのにー」と残念がっていましたが、これがアドリブの面白いところじゃないですか。だってあの状態から「かすかに遅れる」くらいで終わらせたんだよ。知らなかったら気づかないって。絶対。





これでリクエスト終了。当たらなかった。残念。


このリクエスト権を得る男性がことごとくSE。3・40代のコンピュータ関連の方に異常に人気があるんですね。「世の中の8割の人がIT関連・・・?」と谷山さんツッコミ入れてましたが。IT関連でもない普通の書店員と事務員に当たりゃしないわけです。当たりたかったな。台詞入りのヤツとかリクエストして困らせたかったな。『川のほとりに』とか『そっくり人形展覧会』(元花組芝居、現在お天気お兄さんの木原実さんが台詞入れてます)とかさ。本命は『催眠レインコート』か『海の時間』か『ガラスの巨人』だったんだけど。10年通っても一度も当たらない人もいれば、2度3度当たる人もいるそうで、宝くじと同じ、「運」ですね。



最後の曲。元気に闊歩する犬の歌です。「犬の歌のつもりで作りましたが、家族でも、恋人でも。自分の好きな相手を思ってください。ここに来ている方たちが無事に帰れますように」



10 『ボクは帰るきっと帰る』



そしてアンコール。
文部省の『早ね早おき朝ごはんキャンペーン』で依頼されて作ったそうですが、谷山さん、早寝早起き出来ないことで有名です。「はやねーはやおきあさごはん♪むりはーしないでー♪」としゃあしゃあと歌っておられました。前日はヤマハ発動機の社歌だったそう。ポプコン出身ですからね。それも聴きたかったな。ヤマハの社員さんもほとんど知らないんだってさ。




EC 『早ね早おき朝ごはん』




お疲れ様でした。





予想外でした。こんなに楽しいと思って無かった。実はこの中で私の知ってる曲は半分の5曲(『夢のスープ』『ひとみの永遠』『やまわろ』『恋人の種』『てんぷら☆さんらいず』)だったんですが、全部の曲を満遍なく楽しめた。たぶん全曲知らなくても面白かったと思います。




総括。



トモトモSUGEEEEEEEEE!!!




いやもう「凄い」としか言いようが無い。冒頭で「昨日のアンケート、「トモさんがすごい」という感想しかなくて、正直「もう見なくていいんじゃね」とか思ってたんですが」とAQさんがおっしゃってたんですが、わかる。それ以外書けないもの。圧倒的。曲を壊すという意味じゃなくて。「ホントに知らないの?ホントに?」と確認したくなるほどのハマリっぷり。元からこういうアレンジじゃないの?と思うくらい見事。アドリブなんて信じられない。ああ、でも練習したらこんな緊張感と高揚感は無かっただろうな。知らなくて正解だな。トモトモも「練習したら・・・間違った所わかっちゃうじゃないですか・・・」と心の底から練習したくなさそうでした。あはは。


水を張った器にビー玉落としたり、古銭をつなげたものを指ではじいたり、カズーを吹いてみたり、珊瑚をスティックでたたいたり。もちろんドラムやティンパニ(?)も。どれも全て曲にハマっているのです。前年はバイオリンの斉藤ネコさんだったそうで、ネコさんは谷山さんのアルバムにかなり参加しているので曲を知っているし、知らなくても大体の雰囲気はわかると思うのです。で、バイオリンは「空気を支配する」のに対してパーカッションは「世界を左右してしまう」ような気がします。トモトモの音は間違いなく『谷山浩子の世界』を構築していた。とっさの判断力とか想像力とか瞬発力とか、どうなってるんだろう。雰囲気しか伝えられてないのに。なんでこんな事が出来ちゃうんだ。途中でリズムが変わってもついて行っちゃうんだよ。すげえ。全然知らない曲なのに。


客電ついた後、ステージに行ってトモトモの装備を見学したんですが、「これをどうやって・・?」というようなナゾのグッズがいっぱい。ビニール人形とか子供用の傘とかペンチとか。全部は使ってなかった思いますが、リクエストされた曲によっては予想だにしない使い方をするんでしょうね。




来年も行く、絶対。と決意を込めて、ベルクで一杯やって友人宅へと帰ったのでした。来年もトモトモだといいな。