和宮様御留

konegi2006-06-17

和宮様御留』の感想です。悪口雑言ですので、興味無い方はスループリーズ。




6月17日  『和宮様御留』  新橋演舞場


観行院  池畑慎之介
庭田嗣子  小川真由美
少進  波野久里子
土井重五郎  松村雄基
乳人藤  英太郎
和宮  大野梨栄
橋本実麗  加納幸和
フキ  植本潤
長橋の局  紅貴代
能登命婦  伊藤みどり
勝光院  加納幸和
九条関白尚忠  八代進一
酒井若狭守  水下きよし
三浦伝兵衛  うえだ峻
岩倉具視  桂憲一
上臈花園  東千晃
新倉覚左衛門  安井昌二
新倉志津  高橋よしこ
宇多絵  石原舞子/鴫原桂(ダブルキャスト




まず驚いた事。

新派って、男優もいたんだ・・・!!


もうほんと済みませんでした。知りませんでした。さらに女形がいらっしゃった事も知りませんでした。女優だけの劇団だと思っていましたよ。




数年前に花組芝居で上演した芝居の改訂版。新派に花組の役者数人が参加しての公演です。原作は有吉佐和子の同名小説。幕末、公武合体のため江戸へ降嫁する『悲劇の皇女』和宮は本当に和宮本人だったのか。という仮説を元に、京都から江戸への道中に起こる少女たちの悲劇を描いています。


本来、原作つきの芝居(映画も)と云うものは、原作を読んでいない観客にも理解できるように作られていなければならないと思います。原作を知っている人にとっては多少冗漫に感じられても、『状況説明』はとても大事です。その点で、こういった『商業演劇』を観にくる世代の方に合わせているのでしょう、この芝居は懇切丁寧に『説明』してくれるので、当時の宮中の様子や世論状況をそれほど知らなくても困る事はありません。


ただ、説明しすぎ。



私はこういう本格的な商業演劇を観た経験がほとんどありません。小劇場ばかりです。なので、『商業演劇とはこういうモノなんだよ』と言われれば「はい、そうですか」という他無いのですが、それにしても冗漫が過ぎます。途中でお弁当食べる時間を入れて3時間強にしなければいけない、という制約を抜きにしても。



おそらく大物俳優さんたちそれぞれの見せ場を作らなくてはならない、と言う大命題があるのでしょう。無駄が多すぎ。『この部屋にこの役者がいて、一言二言台詞を言い、今度はこの部屋にこの役者がいるから舞台を回転させて正面に持ってきて、次は・・・』の繰り返し。何とかして全員に台詞を言わせようとでもしているかのようです。途中で後ろのおばさんたちが「あの人はだれだっけ」等確認していたのもむべなるかな。相当集中してないとわかりません。説明もしすぎると混乱を引き起こすのですよ。舞台でも『余白』は必要。
場面場面を舞台を回転(新橋演舞場は回り舞台です)させる事によってつないでいるのですが、その『間』が、意識を現実に戻してしまうくらい多い。回り舞台だからって、そんなに張り切って回転させなくても良かろうよ。




これね、明らかに演出が悪いんですよ。フキの最期なんてデタラメ。あの場面で爆笑が起きるようじゃ、この芝居、完全に失敗です。本来ならば悲劇の最期に、私も思わず「ウッ」とふき出しそうになりました。本当に役者がかわいそうだ。観客をナメすぎちゃいませんか?「どうせわかりゃしない客なんだから、このくらいでいいだろう」的な。そう思ってしまうほどの、怒りを覚えるほどの演出でした。



劇団新感線が新橋演舞場で上手くいっているので、味をしめたのかもしれませんが、新感線が成功しているのは、かれらが本来演っている芝居が、『商業演劇』からかけ離れているからです。だから上手くいく。化学反応を起こしているわけです。花組芝居の立ち位置は、もともと商業演劇にとても近い。各々の持っている個性を殺しあってしまう。



この『和宮』、花組で上演したものを、私は観ています。とても面白かった。衣装もセットも比べ物にならないくらいシンプルだったけど、余計なもの一切をそぎ落として芯の部分だけを見せていたんですね。だから、長い時間で上演するためには、『改訂』するのではなく、一から全部、3時間用に、作り直して欲しかった。元の脚本を強引に3時間に直すのは無理があるのです。どなたの意向か知りませんが。


役者さんは皆さんとてもお上手でした。嫌味でなく。波野久里子が誰よりもオトコマエだった。登場人物の中で一番『いい人』だったんですが。うん、少進すごく優しそうで良かった。池畑慎之介って、めちゃめちゃ上手いんだなあ、と思いましたよ。彼(というか彼女というか)の芝居なら、また観に行きたいくらいです。役者に関しては、心の底から安心してみていられました。さすが新派と言えましょう(えらそうに)。あと、セットと衣装は素晴らしかった。お金あるんですねえ。衣装なんてため息つくほど美しかったです。着物と云うのは代々受け継ぐ財産ですね。





まあ、なんでまたこんな芝居を観ようかと思ったかというと、ただ単に潤ちゃん(フキ役)が新派の中でどれほどの可憐っぷりを魅せてくれるか興味があったからってだけなんですが。確かに恐ろしいほど可愛らしかったです。多分観ていたご年配の方々の何割かは、最後まで潤ちゃんが不惑直前のおっさんだと言う事に気づかなかっただろうと思われます。

全裸もあったがな!