4月15日  東京バレエ団 『ドン・キホーテ』  於東京文化会館

キトリ/ドゥルネシア姫  小出領子
バジル  後藤晴雄
ドン・キホーテ  芝岡紀斗
サンチョ・パンサ  高橋竜
ガマーシュ  古川和則
メルセデス  奈良春夏
エスパーダ  木村和夫
ロレンツォ  平野玲


2人のキトリの友人  長谷川智佳子/西村真由美
闘牛士  大嶋正樹/中島周/松下裕次/野辺誠治/辰巳一政/長瀬直義/宮本祐宣/横内国弘
若いジプシーの娘  井脇幸江
ドリアードの女王  田中結子
3人のドリアード  乾友子/浜野香織/前川美智子
4人のドリアード  森志織/福田ゆかり/村上美香/阪井麻美
キューピッド  佐伯知香


ヴァリエーション1  西村真由美
ヴァリエーション2  長谷川智佳子


協力  チャイコフスキー記念 東京バレエ学校
指揮  アレクサンドル・ソトニコフ
演奏  東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団  



床屋のバジルとキトリは恋人同士。一緒になりたいのだが、キトリの父親ロレンツォはマヌケだが大金持ちの貴族ガマーシュにキトリを嫁がせたい。偶然バジルの床屋に客としてやってきた妄想癖のあるドン・キホーテはキトリを見てドゥルネシアだと思い込む。食い逃げをして逃げ回っているサンチョ・パンサを救って鎧持ちにしたドン・キホーテは勝手に冒険に旅立ち、バジルとキトリは理不尽な結婚を避けるべくお祭りの騒ぎに乗じて町から逃げ出す。美青年エスパーダも愛するジプシー女メルセデスと共に町から出る。


まあ、それから色々あって、二人が無事に結婚する物語。(あらすじ書くの飽きた)




ソリストの素晴らしい技術やパ・ト・ドゥの官能やコール・ド・バレエの統制の取れた美しさも好きですが、バレエの何が好きかって、鮮やかな衣装を着たダンサーたちが大勢で踊っているトコロです。なので、この『ドン・キ』の一番好きなところは1幕の広場でのお祭りシーン。良いねえ楽しげで。町娘や闘牛士やらが入り乱れてのダンス。ここから続いて風車小屋でのジプシーたちのタンバリンダンスは何度観ても良い。エスパーダ(色男)がやけにタンバリン使いが巧みなトコも良い。



キトリ役の小出さんは今回が初役。とてもチャーミングでふわんとした可愛らしいキトリでした。前日の上野水香の方も観た友人によると上野さんは『姐御』だったそうで。バジルが町娘にちょっかいをかけると「なぁにやってんだゴルァアア!!」と引っぺがしに行く感じだったそうな。ああ、それも観たかったなあ・・・。
小出さんは「ちょっとぉ。私がここにいるでしょぉ?」と可愛らしくにらむ感じ。全くタイプが違うんですね。面白いなあ。同じ役なのに。
で、上野さんの相手役の高岸直樹さんは多分「あっはっは!!気にする事ないさ!君が一番だよ!」というような、とてもおおらかなバジルだったんだろうなと。彼は太陽のダンサーだからな。後藤さんは珍しくとても可愛らしい演技。「えへへ、ごめんごめん」とでもいうような。小出さんと二人揃って『下町の人気者』って感じ。最近は野生的な後藤兄を良く観ていたので新鮮でした。ベジャール作品だとワイルド担当だもんね。こういう演技も良いなあ。やっぱ安心して観ていられる。ここ数年私の中でとても株が上がっているのだ。エスパーダ役の木村さんと共に。



木村さんは今回『も』かっこよかった。ほんと安定感あるよな。なんて言うんでしょ。端正でどこか無機質なんだけど、とても魅力的なのだ。アンドロイドっぽいというか(言っときますが、ものっそ褒めてます)。どんな踊りを踊っても揺るがない『木村和夫』があるんだろう。
メルセデスは前日の井脇さん(ダブルキャストでした。ジプシーの娘と交代)とどっちが良かったんだろう。比べてみたい。たぶんタイプが違うからなあ。奈良さんの踊りを意識して観た事が無かったので、持ち味がわからなかったんですが、妖艶さがちょっと足りなかったかも。ジプシーとは言えメルセデス役だったから抑えてたのかな。あんまりエロ過ぎてもアレなんだけど。この日の若いジプシー娘が井脇さんだったんですが、セクシーで、そして意思の強さが表現されていてドキドキしました。井脇さんなんとなく優等生っぽいイメージがあるので。学級委員の思わぬエロティシズムを垣間見てしまった感じ。



ドン・キホーテサンチョ・パンサのコンビ(たぶん気づいておられると思いますが、この作品、主役はキトリとバジルです。ドンさんじゃありません)はコミカルで思わず頬が緩んでしまう。「おじいちゃん、もうご飯食べたでしょ!」と言わんばかりのサンチョ・パンサの世話焼きっぷりラブ。ガマーシュも上手いな、古川さん。この方ベジャールの『くるみ割り』でたしか猫のフェリックス演ってたと思うんだけど、コミカルな演技が上手なんですね。芝岡さんのドン・キホーテもボケっぷりがよく表れてて面白かった。賛助出演になってたんですが、辞めてた?いつの間に?



サンチョ・パンサが町の人たちに取り囲まれて大きな布でトランポリン状態にされるトコにちょっと笑った。なにもそんなに、というくらい好き放題に高々と。高橋さん小柄だしな。闘牛士軍団、遠慮無し。




闘牛士&ジプシー軍団は注目の男性若手ダンサー大集合。どこに居ても大嶋さんだけは一発でわかってしまうんですがこれは恋ですか。それとも足の長さでかしら。
そういえば大嶋さんと中島さんがプリンシパルに昇格されたそうですね。おめでとうございます!急激に成長してたもんねえ。大嶋さん2月のベジャールで演じた『舞楽』すっごく良かったもんな。濃くて。そのちょっと前の中島さんの『ギリシャの踊り』もゾクゾクするほど素晴らしかったし。もう一回観たいなあ。中島さんの『ギリシャの踊り』。


ドン・キホーテの夢のシーンに出てきたキューピッドの子どもたちはバレエ学校の生徒さんたち。可愛いねえ。この子たちでどのくらいのキャリアなんだろう。10歳前後だと思うんだけど。とても上手だった。親御さんたちは誉れだろうなあ。





初役ながら素晴らしいキトリでした。上演中も何度も「ブラボー!」「ブラバー!」と声が上がり、カーテンコールも拍手が鳴り止まず。7・8回?それ以上?応えてくれました。なんか、会場の雰囲気も暖かかった。前日よりも全体的にはまとまってたようですね。最後のカーテンコール後、下りた幕の中でも盛大に拍手が鳴ってて、ホントに「良かったね」、と思いました。
そしてその何度もあったカーテンコールの間中延々と小芝居していたガマーシュ@古川さんとロレンツォ@平野さんに激萌え。かーわーいーいー。