あぜんぼうぜん

オリンピックどころか、昨日がバレンタインだったという事すら気づいていませんでした。





冷蔵庫にギネスと純米があったよな、今日はどっち呑もうかな、なんか肴でも買って帰るか、とスーパーに寄りいろいろと物色しておりました。



「さかなさかなさかな〜♪」という曲に混じって、甲高い音が聞こえます。笛です。
はて、この曲にこんな陽気なサンバホイッスルなんてあったかな。谷山浩子の「てんぷら☆さんらいず」じゃあるまいし。
音はどんどん大きくなっていきます。


え?ライブ?と周りを見回すと、遠くにそれらしき






ばあさんが。





籠を載せたカートを押しながら。周りを威圧するように。


あっけに取られてぽかんと観察していると、どんどん近づいてきます。
あ、サラダ売り場の前に立ち止まった!吹きながらサラダを一個一個指さし確認!音で店員を呼びつける!すげえ!笛だけで指図してるよ!
ああ!こっち来たこっち来た!ひっきりなしに吹き続けているよ!なんのために吹いてんだよ!無駄だよ!しかもリズム感無え!イライラするよ!どうせならなんか軽快な音楽でも奏でてくれよ!あああ!!目が合っちゃったよ!



来ーるー!きっと来るー!




ばあさんの後ろに貞子が見えた。




まっすぐに私の方へ向かってきます。どうしよう。逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ。逃げろよ。


まさに「蛇に睨まれた蛙」のように動けなかったのですが、ハっと気づき危うくばあさんをかわします。他のお客さんも呆然としながら避けています。その間ばあさんスピードを落としません。そして笛も吹きっぱなし。イエローカードを出し続ける審判のようです。むしろおまえがレッドカードだ。



皆唖然としながら見送っていたのですが、角を曲がり姿が見えなくなり音も小さくなっていったので、漸く強張っていた空気も動き始めました。異様な緊張感が解けて見知らぬ周りの方達と口々に「なんだったんでしょうね」などど交わしあっていたところ。




今度は反対側から。




I’ll Be Back





怖かったので、とりあえず目の前にあった「〆さば」を引っつかんで逃げました。違うんだよ。白身魚の生を食べたかったんだよ本当は。





その後レジでもお見かけしましたが、店員さんが商品をレジに通す度に「ピッ」「ピッ」と指さし確認してらっしゃいました。

籠の中身を覗いてみました。
今夜はどうやら焼き鳥を作られるようです。鶏肉と砂肝とねぎが入ってた。調理中もホイッスルで気合を入れているのか、大変気になります。