英国ロイヤルバレエ団 2005日本公演 『マノン』 東京文化会館

マノン  シルヴィ・ギエム
デ・グリュー  マッシモ・ムッル
レスコー  ティアゴソアレス
ムッシューG.M.  アンソニー・ダウエル
レスコーの愛人  マリアネラ・ヌニェス
マダム  エリザベス・マクゴリアン
看守  ウィリアム・タケット
乞食のかしら  ジャコモ・チリアーチ
高級娼婦  ベリンダ・ハトレー、ラウラ・モレラ、シアン・マーフィ、クリスティーナ・エリダ・サレルノ
紳士たち  リカルド・セルヴェラ、佐々木陽平、ジョシュア・トイファ
客  ベネット・ガートサイド、アラステア・マリオット、デヴィッド・ピカリング、リチャード・ラムゼイ、クリストファー・サンダース
老紳士  フィリップ・モーズリー
娼婦、宿の主人、下働きの女性、乞食の子どもたち、ネズミとり、召使、番人、給仕、他   英国ロイヤルバレエ団


指揮  グラハム・ボンド
演奏  東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団



先週の『シンデレラ』を観た友人から「ジョナサン・コープが内臓疾患で休演してるよ〜」と聞いていたので残念な気持ちで臨んだのですが、素晴らしい舞台でした。久しぶりにスタンディングオベーション。「ブラボー!」「ブラバー!」の声が飛び交って割れんばかりの大拍手でした。私も言いたかったけど言えなかったのでここで言う。
「ブラボー!!!」(舞台前まで行って拍手)



マッシモ・ムッルはデ・グリューを『いいトコの、お人よしのお坊ちゃん』として演じていて、『マノン』という「ダメなカップルの自滅物語」にぴったりでした。ジョナサン・コープだったらもっとワイルドで強引なデ・グリューになったかな。


ストーリー書くと長くなってしまうので書きませんが*1、『マノン』は要約すると「自業自得」の物語です。なんつうか、いつも思うんですが、マノンって「悪魔の花嫁」の美奈子みたいですよね?誰に同意を求めているのかわかりませんが。「お前さえいなければ全てが丸く収まる」というか。これ下手なダンサーがやったら嫌な女になってしまうんですよ。平気で嘘をつくし、すぐにお金に眼が眩むし。デ・グリューをそそのかしてイカサマさせて、そのお金でトンズラしたり。
その行動の野放図っぷりが自らを破滅に追い込んでいくんですけど。売春婦のかどで投獄されて(女囚のダンスが素晴らしかった!衣装も可愛いんだ。女囚なのに)果ては沼地。
ダンサーによってもマノンのどの面が表に出るかによって印象は変わると思います。「無邪気」が出るのか、「脆さ」が出るのか、「小悪魔」が出るのか。ギエムは「マノンなりの誠実」でした。あくまでも私の印象ですが。こんなに可愛ければ、そりゃお坊ちゃんのデ・グリューはニューオリンズの監獄まで追って行っちゃうよね。マノンを陵辱した看守殺しちゃうよね。

最後は追っ手をかわしてたどり着いたルイジアナの沼地で、マノンはデ・グリューの腕の中で息絶えます。マノンが死ぬシーンで終わりますが、この後のデ・グリューはどうしたんだろう。なんかずっとメソメソしてそう。ムッルのデ・グリューだと特に。


ダンサーでいうと看守役のウィリアム・タケットが良かった。ちょっとの登場だったのに憎憎しげで印象が強かった。あと、レスコー役のティアゴソアレス。第一幕で逃げたマノンとデ・グリューを追いかけて馬車に飛び乗る際のマントの翻り方が最高にかっこよかった(それは・・・)。
第一幕はギエムとムッルのパ・ト・ドゥ*2も素晴らしかったです。出合って恋に落ちたばかりの初々しい二人。
第二幕のベッドルームでのパ・ト・ドゥは濃密な官能でした。アレだけで1万円払ってもいい(チケット代は2万円)。


しかしギエムってやっぱり「別格」の人なんだなあ。登場するだけで空気が変わる。



全三幕(途中休憩20分ずつ2回)でしたが、短すぎるくらいでした。何時までも見ていたかった。




海外のバレエ団のクラシック演目を観ていつも思うのですが、舞踏会のシーンなどで豪華なセットで豪華な衣装で上手な人たちが踊っているのを観てるのは、それだけで幸せな気分になりますね。私に金があったら世界中のバレエ団のプリンシパル*3だけを男女各100人くらいずつ集めてゴッテゴテの衣装着せてベルサイユ宮殿かなんかの大広間で踊らせるね。それを私は高いところから眺める。嗚呼幸せだ。パンが無ければケーキをお食べ。(妄想暴走中)



『シンデレラ』も観たかったな〜。吉田都で。アンソニー・ダウエルが上の姉役だったそうな。うわあ。

*1:新潮社から文庫出てます。

*2:基本的には男女二人の踊り。例外も有。

*3:各バレエ団によって言い方は違いますが、最高位の事。