停電の昼に

突然停電しました。昼ごろ。会社です。店内全て真っ暗。直ぐに非常灯はついたのですが、何が起こったのかわかりません。近隣全て停電なのかと思い、近くのコンビニを見たのですが、しっかりと明かりはついています。事前に工事の連絡も無かった。

停電になった瞬間、私が思い出したのはJ・ラヒリの「停電の夜に」(新潮文庫)。
だったらかっこよかったのですが、ドリフでした。嗚呼年代が。そして脳内にはどこからともなく谷山浩子の「闇に走れば」。とてつもなく暗い歌です。停電の歌でもないし。どちらにしろ緊張感のカケラも無い。


暗くなると人間はなぜか声を潜めますね。きゃあきゃあいいながら選んでいた親子も、商品の棚の前で「これは良い、これはイマイチだ」と批評しまくっていた女子高生も、入り口までは大声で笑いあって来た素行の悪そうな兄ちゃんも店内に入って暗い事に気づいたとたん。
全員内緒話。
「停電って怪獣みたい」と表現したこどもの言葉が文春新書「こどもの詩」に載ってましたが、人間てやっぱりどこかで闇を畏怖しているのだなあと改めて思いました。


幸いセキュリティサービスの方が直ぐに来て応急処置をしてくださって、一応電気がつき、その後電力会社の方も来て原因を見つけてくれました。漏電でした。

電気のつかない間、当然レジもパソコンも使えないため、足し算は電卓、引き算は己の脳。問い合わせも、久しぶりに自分の記憶の台帳を検索して商品探し。点くまでの間、ものすごく頭を使ったのですが、とても楽しかった。不謹慎だけど。パソコンに頼らなくてもまだ自分で発売元や商品の顔、重さや手触りを思い起こす事が出来る。普段はパソコンが探して見つけたものを機械的に手渡すだけの作業になっていたんですね。停電のおかげで商品がここに「存在」する事が確認できた。たまにはいいのかもしれません。こういうことも。


1時間以内なら。